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【夜のお話:::part2:::】 犬ト天ノ馬の話 [童話アートワーク]

彼女は天翔ける天ノ馬だった。

空を駆ける翼を持ってはいても、天の事は、わからなかった。
地を駆ける馬と似てはいたが、その眷族ではなかった。
彼女が凍てついた一面の漆黒の夜空を飛翔するときには、夢と、孤独だけが彼女の友だった。

それが、身体を満たしている事が彼女の誇りであるが故に、彼女は、だれからも拘束されない自由な野生の天ノ馬でいることができた。

地に棲む彼は、身も心も疲れ切った飼い犬だった。

天ノ馬は、自分を繋ぎ止めてくれるものが欲しかった。
地に棲む犬は、自分を自由にしてくれるものが欲しかった。

天ノ馬は、出会った犬に聞いた。

あなたのその首についているもの、それはなに?

これは、首輪というものだ。

疲れ果てた犬は、ぽつりと応えた。

アクセサリーというんだ…。人が、指輪や、ネックレスで飾るように、僕らは、首輪の善し悪しを自慢し合う…。
しかしそれは、結局は、僕らを繋ぐ鎖であることに変わりないんだ…。
みんな、そのことに触れないで、繋がれている鎖の善し悪しに、その丈夫さに、美しさにかかりっきりで、その本質を見ようとしないんだ。

そう…。あなたたちは、心が繋がれているのね…。

ああ、僕らの種全てを繋ぐ鎖だ…。

それを知っていても、あなたは、その鎖から逃れようとしないの?
彼女は言った。

僕は、犬だ…。犬であることは変えられない。

私が、変えてあげられるとしたら?
そう、私の力は、この荒野を一日で駆け抜けることができる力、全ての天候を自由にすることの出来る力を持っている。

繋がれた心を解き放つなんて事は私にとってはたやすい事…。

…。

僕は、君に何をあげたらいい?

あなたの誠実な心を…。

雨の日も、嵐の日も彼女は、天を駆けることができた。
犬は、その彼女の背に乗り、振り落とされまいと必死で、そうしているうちに、駆けていない犬の方が、疲れ果ててしまうのだった。

静かに、その心を憩わせることができるのは、二人で身体を寄せ合って眠る時だけだった。

彼女は、犬の疲労を知っていた。

ある日、彼女は、自分の心臓を、犬のそれと交換した。
犬は、いくら走っても疲れなくなった。
その駆ける速度は遅かったが…。

犬の心臓で走る天ノ馬は、疲れやすくなった。
しかし、犬の歩調と同じ速さで歩くことができた。
天ノ馬は、犬と一緒にあるくことができて幸せだった。

犬は、駆けて、獲物をとってきた。いくら駆けても疲れないから、獲物はすぐに捕まえられた。
しかし、天ノ馬は、犬の捕ってくる餌は食べられなかった。

天ノ馬は、朝露の乗った牧場の草が好きなのだった。

犬は、天ノ馬が満足するほど草をとることが出来なかった。
その小さな身体で運べる草は、たかがしれていて、朝露の乗った草は、犬が、採ってくる途中で、全てしなびて、みずみずしい露を全て振り落としてしまうのだった。

犬と、天ノ馬の目的地は、馬の食べる草のある牧草地へと限られていった。

犬は、天ノ馬のために、駆けていって、その牧草地から、草をとってきて、わずかな馬の草を運ぶ…。
天ノ馬は、その少ない草をおいしそうに食べてくれた。
犬は、それだけで幸せだった。

そして、天ノ馬は、犬といっしょに歩んでゆくことができることが、とても幸せなのだった。

ある日、天ノ馬は、地を駆けるもう一つの種の馬を見た。

かつては気付かなかったが、その、地をかける馬は、しなやかで強く、野生的な美しさをもっていた。
天ノ馬は、足音を忍ばせて、その場を去った。

犬は、天ノ馬の様子が変なことに気付いていて、以前のように、心が踊らなかった。

そして、ある日犬は、天ノ馬に言った。

僕らは、何故、交わらない道を歩んでいるのだろう。
その先に、何があるというのだろう。
日々の食事さえ満足にとる事の出来ない不安な毎日だけだ…。
ほら、ごらん、君の身体は、かつての素晴らしい美しさを微塵も残していない…。
干涸びて、飢え、いまや、死をまつばかりだ。
さぁ、君の心臓を返そう…。君は、これで、地の果てまでも駆けることができる。

さぁ、君の牧場は、君がゆっくり駆けていってもほんの数分でついてしまうよ。
さぁ、好きなだけ食べておいで。

天ノ馬は、心臓を受け取ると、犬の心臓と交換した。犬の心臓の暖かさが、心から抜け出ていった。

私は、あなたの心臓で、今来た道を見てきた。

僕は、君の心臓で、今来た路を感じてきた。
だから、ぼくたちは、二度とこの場所に戻れない…。

二人とも、別れたら、二度と合うことができない。
そのことを知っている天ノ馬は、犬を背に乗せようとした。
しかし、犬は、頑なにそれを拒んだ。

僕は、君の首輪になる…。
僕が、いつも嫌っていた、みすぼらしい首輪だ…。

僕は、君との素晴らしい音楽のような人生を死んでも忘れない。
魂だけになったら、君にまた会いにこよう。
この枷となる身体に縛られない、自由な魂になったら、君と一緒に駆けよう。
だから、僕は、ここでそのときが来るのを待とう…。

天ノ馬は、涙を流して哀願したが、犬は、受け付けなかった。

天ノ馬は、犬の、その柔らかい茶色の毛とか、あたたかい身体とか、やわらかいおなかとかが大好きだった。

その身体が消えてなくなるのは、悲しかった。

犬の心臓の暖かさをいまでも覚えている。

絶えず自分の中で脈打っている犬の心臓はとてもやさしい鼓動を聞かせてくれていた。

だから、天ノ馬は、犬といっしょに、その場所を動こうとしなかった。
その場で、いつまでもいっしょに身体を寄せ合っていた…。

二人は、それだけでしあわせなのだった。

そして、二人は、今までの幸せを語り合いながら静かに何度も日がくれては昇っていくのを眺めていた。

ある寒さが厳しい夜に二人は身体を寄せ合って眠った。

静かな夜だった。

天の星が降ってきた…と二人は思った。

白い、冷たいものが二人に降り積もっていた。

ああ、これで、二人は天の星になるのだと思った。

そうして、二人は静かに目を閉じた。


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【夜のお話:::part 0::】 昔の話。 [童話アートワーク]

昔の話。
昔ほど激しく人を愛するという事が無くなったかもしれない。
それは、人を愛する事に対する恐れとか、自分を美化できない年齢になったからかもしれない。

四六時中、その人を考え、その人の一挙手一投足に狂喜乱舞した昔のエネルギー。
それは、いつの日か変わり、いろんな事を誤魔化す事ばかり上手になった。
自分さえを誤魔化す事が上手になった。

自分の心に正直に向き合っていた頃の文章は、青臭く恥ずかしいが、繊細で好きだと思えるようになった。
いつか本にしようと思う…。

期間限定で、アップしようと思っています。
短期間で消すかもしれませんが、ちょっとでも心に残るような話として受け取っていただければ嬉しいような気がします。【夜限定】
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追記::夜限定にも関わらず、読んでくださった方、どうもありがとうございます。
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【夜のお話:::part1:::】 毒と歌声 [童話アートワーク]

空の片隅から落ちた赤い星は、地に落ちてサソリとなった。

サソリにとって、あまりにも、この地上は、冷たく乾いていて、心の中には虚ろな寂しさが充満し、深い深い、痛みとなった。

サソリは、永く、永く、塵を喰らい、人がめったに踏み込まない砂漠に住むようになった。

永く、永く、心の中に満ちた寂しさは、触れると命を奪う人が恐れる毒となった。
その毒に満ちあふれた心を互いに分かち合う者さえなく、さそりは、一人、砂漠の中にいた。

月夜の夜。
深い深い蒼い夜の事。

旅人達が、砂漠を越えていた。
多くの馬。沢山の荷物をラクダの上に乗せて、ゆっくりゆっくりと歩を進めていた。
運ばれている荷物の中に美しい鳥がいた。
美しい声は、堅い殻に包まれた心の中に深く響き渡り、サソリは涙を流した。

遠い、空の記憶が蘇っていた。

サソリは馬の背に這い上がり、鳥カゴの中に迷いこんだ。
鳥は恐れるでもなく、優しく歌いかけた。
その声は澄み渡った心で、何も知らない無垢なる魂をそのままに映した声だった。

自分が求めても手にいれる事の出来ない思い。
サソリは、涙を流しながら、その歌を聴いていられなくなっていた。
かつて持っていた祈りの心。
かつて持っていたやすらぎ。
かつて持っていたやさしさ。

その歌は、彼が歌いたくても歌えないものだった。
これは、私の歌だ。
私が歌いたかった歌だ。
サソリは、その、美しい鳥の姿と、その声を嫉んだ。
痛みを伴った涙を流した。

サソリの眼は赤く光っていた。

サソリは鳥に燃え上がるような怒りを抱いた…。

かつて自分が心の中に宿していた歌、その歌を、自分の痛みを知った後でも歌えるのか?
歌えるはずはないだろう?
私の受けた屈辱、怒り、悲しみ、寂しさ…。
この思いに満ちた毒を君に注いでみれば、きっとそれがわかる。

君は、この苦しみに耐え兼ねて、歌を無くしてしまい、二度とその声で歌うことはできない。
この苦しみは、君の体に僕のような堅い堅い殻をつくりあげてしまうだろう。
君の心は、この苦痛に満ちた毒に満たされて、溶けてしまうに違いない。

その言葉を聞くと、鳥は言った。
私は、きっと、君の毒をも理解してあげることができる。
この身体が溶けたとしても、きっと、心満たす歌を歌い続けてあげられる。
いつでも、どこでも、ずっと、ずっと。

サソリは、その根拠の無い言葉への侮蔑と、怒りに満たされながら、その鳥の腹に、微かに毒を流し込んだ。

鳥は、痛みに耐えながら、サソリを優しくその羽根で包み込んだ。
サソリの堅い冷たい殻をあたためるように。

かすかに囁くように歌うその歌は、子守歌のように響いた。
痛みに似た愛おしさに満ちた歌声だった。

サソリは抗うように、僕が持つ苦しみはこんなものではない。
きっと、君は、僕の体の中に満ちた深い深い毒を注いでしまえば、全てを呪いながら死んでいくだろう。
僕の毒は、世界中全ての呪いをかき集めた、悪意に満ちたものだから。

あなたの毒は、確かにひどい苦痛を伴っている。
私は、きっと、あなたの全ての毒をこの身体に満たすことはできない。
けれど、あなたのその毒がその深くならないように、うけとめていくことはできると思う。
私は、そのひどい痛みをあなたがもっているからあなたを尊いものだと思う事ができる。
愛おしく思うことができる。
あなたのその痛みは、一人で宿していくにはあまりにも、辛い。

サソリの毒は、ある日は、ひどく自虐的に、ある日は、ひどく暴力的に鳥の中で荒れ狂った。
鳥の声は、あるときには激しくむせび泣き、あるときには、狂ったように罵るような響きを醸し出した。

旅人達は、こんな声では、この鳥は使い物にならないと、鳥を殺して食おうとした。
しかし、そこで、鳥カゴの中に、赤い光を宿したサソリを見つけると、恐れのあまり、鳥カゴを砂の中にほおり出してしまった。

サソリは、鳥カゴの鍵を開ける鍵を持ってはいなかったが、かぎ爪で開けることはできそうだった。
だが、サソリはあえて、砂漠の中でこの鳥に毒を注ぎ続け、お互いに朽ち果てることを望んでいた。

あなたのその赤い眼には、いったいこの世界はどのように見えているの?
あなたは、世界の全てが赤く、赤く、呪うべき物に見えているの?
私の声が聞こえる?
私が歌う歌は、あなたの心に届いているの?
私の歌は、あなたの苦しみを受け止めて、受け止めて、本当の思いをいつも語りかけていたのに。
あなたは、何を恐れているの?

それは声にならない問い掛けだった。
鳥は伝えたくても、伝わらない思いを歌にしようと思った。
しかし、鳥にはもう、呟くような声さえあげることができなかった。
ただ、さそりをじっと見つめることしかできなかった…。

サソリは、鳥との絆が切れたように感じた。

歌ってくれない鳥は、もう、サソリを思っているのかもわからなかった。
サソリは、自分がしてきたことを後悔した。
自分の持っている毒を呪い、のたうちながら苦しんだ。

鳥は、そんなサソリを見つめ、自分がサソリをまだ、思っている事を知らせたかった。
しかし、咽はその毒で焼き付き、かすかな息しか搾り出すことしかできなかった。

それでも、鳥は、震える翼でサソリを冷たい風から守ってあげようと、そっと羽根で包む。
鳥の羽は、やわらかくサソリを包み込んだ。

サソリは嬉しさと、後悔とで身が引きちぎられそうな思いを抱いてそっと鳥を見上げた。
赤い眼からは、大粒の涙が溢れていた。

僕は何もしてあげなかった。
それなのに、何故君は、僕をこうして優しく包んでくれるのだろう。
どうして、僕の心は、こんなに引きちぎれそうな痛みを抱えているのだろう。
君が愛おしくてたまらないのに、どうして、僕は君を癒してあげるだけの歌が歌えない?
どうして僕は、君を癒してあげられる薬を作ることができない?
何故、僕はサソリなのだろう?

サソリは、尻尾のねじ曲がった鍵爪で、鳥カゴの扉を開き、鳥を岩場まで運んでいった。
夜の冷たい風が鳥を避けるように、岩場の間に鳥を隠し、昼の間に熱を蓄えた砂を少しかけた。

昼は、サソリは、その歩みの遅い足で、砂漠を渡る者を探した。
ラクダに、己の毒を注ぎ込み、殺し続け運ぶにままならなくなった旅人の放棄した荷物を奪った。
鳥の食べ物にするために。

サソリは、鳥を昼の灼熱の太陽から守るため、岩に堅い殻で覆われた自分の爪で一心に穴を穿った。
旅人から奪った食料はすぐに砂に埋もれてしまい、サソリは、また、旅人達を狙い続けた。
サソリは思った。
私が奪ってきた食料は汚れていて、それで命を繋ぐ鳥に天からの罰が下るかもしれない…。

これは、自分の罪だ、鳥にその咎は無い。
神様、罰するのなら、この私を罰してください…。

そう祈りながら罪を重ね続けていた。

声を無くした鳥は、サソリが岩を穿っているとき、旅人を襲っているとき、寂しさのあまり命の火が消えてしまった。
身動きしない鳥の身体を眼にしてもサソリは、その亡きがらにえさを運び続け、岩を穿っていた。亡きがらが風化し、風に消えるころには、サソリは、岩に穿った洞窟の中に鳥の彫像を彫り上げ、じっとその場にうずくまった。

ずっと、ずっと、サソリは、その世界が終わるまで、旅人を襲い、岩盤を穿ち、いくつも、いくつも鳥の彫像を作り続けていた。

サソリは、鳥の歌う天の歌をいつまでも恋しく思いながらも、天に昇ることを拒み、地を這い永久に生き続けた。


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